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連載企画 > ビジネスに効くクイズ 第2回

精神科医・森隆徳が語る医療に活きるクイズ(全4回)
第2回 『好きだった女性が、他の人のものに……』


 

──── ここからは、森さんの医師時代のお話を伺いたいと思います。森さんは1994年に広島大学病院の精神科に入局。翌年には日本医科大学附属病院・高度救命救急センターに勤務され、そこで阪神大震災や地下鉄サリン事件、国松警察庁長官狙撃事件などに関わる治療に携わられてきました。このような大きな事件・事故に直面されたことは、後の医師人生にも影響があったのではないでしょうか?

はい、非常にあります。ちょっと恋愛の話になるのですが(笑)

当時、日本医大の救命救急センターに行くか、広島大学のICUに行くかという二択を迫られていた時があったんです。その時はとても好きな人がいたから、地元を離れたくなくて広島大学を選ぶつもりだったんですが、局長から「お前は東京に行かなきゃダメだ!」と言われて……。結局、救命救急センターに行くことになったんですね。その間に地下鉄サリン事件や阪神大震災、国松長官の狙撃事件も経験したんですけど、3カ月後に広島に戻ったら、その好きだった女性が他の人のものになっていました(涙)

── それはかなりショック……。

まぁ真面目な話に戻しますけど(笑)救命救急センターの仕事はとても面白くて刺激を受けました。僕以外の精神科医の先生たちは鬱っぽくなって帰ってきたけど、逆に僕は楽しくなっちゃって。

その3ヶ月間は本当にいろいろなことをやらせてもらいました。例えば離島に行って小さな子どもをケアしたりとか、使命感が満たされるような経験をすることができました。精神科医よりも、そういった分野の方が好きなのかも知れないなと、そんな自分の根幹に触れたような体験でした。

── 東日本大震災の復興支援にも積極的に取り組まれていましたよね。

2011年3月11日は、僕らにとってもすごい出来事だったじゃないですか。

たまたまテレビをつけていたから被災地の状況をリアルタイムで目にして、これは大変なことになったなと思いました。

仙台には親友のドクターがいたので何度も連絡をしたんですが、つながらなかったんですよ。ようやく数日後に大丈夫だという知らせを聞いて本当にホッとしました。そんな彼から精神科の先生の助けが欲しいという依頼があったので、もう「行かないけん!」と思って、院長先生の許可を取って行くことを決めました。

当初は一人で現地に行く予定だったんですが、同級生の息子がちょうどその春に東北大学に入学することになっていて。震災で入学が1カ月遅れてしまったそうなんです。そんな彼と一緒に、二人で行ったんですよ。相手は18歳であまり喋らない静かな子って聞いていたから、どうしようかと思ったんですけどね(笑)でも、どうにかこうにか22時間かけてやっと仙台に着きました。

── 具体的にどんな支援活動を行っていたんですか?

被災地では周りの迷惑になってはいけないので、地元の保健師さんなどと協力しながら、いま自分ができることに取り組みました。ある精神科の患者さんは、打ち上げられた船の中に入って出てこないんですよ。行き場を失ったから、船の中で生活するようになってしまったんですね。そんな人を説得して、病院に連れて行ったりしました。なかなか難しいけど、やっぱりやりがいは大きいです。

1、2回目の時は、患者さんと対面で診察をしたり、精神薬の調合の手配をしたりしていました。でも3回目以降になるとシステムもちゃんとできていたから、チームに所属して参加したり、保健師さんに付いてサポートを行っていました。

仮設住宅を回ったりすると、おじいちゃんやおばあちゃんがとても喜んでくれるんですよ。みんな家族や住まいを失って本当に大変な環境の中で、あの笑顔は忘れられないです。

── 森さんは被災地に何度も足を運んでいたんですね。

ボランティアって、大体はブームに乗っかって1回は行くでしょ。でも、2回、3回となると非常に少ない。自衛隊も1年経ったらサッといなくなっちゃう。現地の人にとっては、それがすごく寂しいと思うんですよね。

だから、おばあちゃんから「来年もまた来てね」言われたら、行かないわけにはいかないじゃないですか。その思いだけで10回以上は足を運びました。

最初のうちは支援のお金ってもう大赤字なわけです。でも、おばあちゃんの笑顔で帳消しじゃないけれど、やっぱり嬉しくなりますよね。

その後、僕が院長になってから一度行ったんですが、そのおばあちゃんに会うことができなくて……。そこからあまり行く機会も少なくなってしまいました。やっぱり「おばあちゃんに会いたい」というモチベーションが大きかったんでしょうかね。

でも、親友のドクターは今も仙台で頑張っているから、彼の顔を見に行くだけでも励みになってくれたらいいなと。そんな感じで、今も東北に対する強い思いはあります。
>>>次回は、「医療に活きるクイズ」に注目。医療活動にクイズがどのように役立つのか、森さんの経験談を交えながらクイズの魅力に迫ります。

取材協力:栗林拓司
掲載日時:2019/02/01 11:00
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