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連載企画 > ビジネスに効くクイズ 第1回

構成作家・矢野了平が語るテレビとクイズ(全4回)
第3回 『アメリカ横断ウルトラクイズを超えたい』


 

──── 矢野さんはいろいろなクイズ番組に携わられていますが、番組を面白くするために心がけていることはありますか?

ありがたいことに、『高校生クイズ』だったり『オールスター感謝祭』だったり『平成教育委員会』だったり、歴史のある番組に携わらせていただくことが多いんですよ。もちろん、スタッフの若返りを図るために僕を入れてくださることも多いと思うんですけどね。

そこで心がけているのは、その番組のテイストを守りつつ、オールドファンに許してもらえる範囲で新しいことに挑戦したいというか。そういう点は意識しています。

例えば『オールスター感謝祭』の四択問題って、最初は分かりづらいものがだんだん分かりやすくなる、というパターンが王道なんですけど、そのスタイルを守りつつも、時代によって変化を加えています。実は、最近の『オールスター感謝祭』って、四択の並び替え問題を一問もやっていなくて。それは単純に賞金のルールが変更になったっていう理由もあるんですけど、視聴者が分かりやすいように、現在は三択にしているんです。一番はこれ、一番ダメなのはこれ、じゃあ真ん中はこれみたいな感じで、三択って分かりやすいでしょ。

昔だったら四択の並び替えを集中して取り組んでくれていても、最近はスマホをいじったりして、“ながら”でテレビを観ている人たちがほとんどだと思うんです。だったら、三択が限界かなと。ちなみに今回の『オールスター感謝祭』では、45秒の問題VTRに初めて挑戦しました。大事なのは、システムを守りつつ、新しいことに挑戦していくことですね。

──── 古くからのファンの方も、新しいファンの方も、どちらも取り込むことができそうですね。

そうですね。ただ、クイズ番組を観ている人の九割五分くらいは、普通のバラエティと一緒でそんなに集中して観ていないんじゃないかな(笑)これは現代に限らず、昔からそういうものだと思うんですよね。

自分はクイズが好きで、クイズ番組をすごく夢中で観ていたから気づいていなかったんですけど、意外とみんな集中してないなっていう(笑)逆に言うと、僕はクイズプレイヤーだったから、その事実に気づくのが遅かったと思うんです。だからもうちょっと楽しくて、お茶の間のみんなが参加しやすいような工夫が必要なんでしょうね。その工夫を忘れないようにというか、時代に合わせて盛り込んでいければいいですね。

近々『平成教育委員会』の新たな番組が始まる予定なんですけど、小学生向けの問題に大人が回答する“教科書クイズ”って、今はもう定番になったじゃないですか。だからこそ、その草分けの番組として何が出来るかっていうことを考えないといけないなと。

それで、今の時代に合わせて「あなたならこれをどう考えますか」みたいなクイズを始めたんですよ。それって今の中学受験で求められていることなんですよね。「どう考えますか、どう解決しますか」という問題が、実際の中学入試で出題されているので、じゃあそれをやろうよって。もちろん、バラエティとして面白くなるような企画に落とし込まないといけないですけどね。

ところで、よく「視聴者のニーズに合わせて」というフレーズを耳にしますけど、僕はちょっと違うと思うんです。視聴者のみなさんって、実はクイズ番組を普遍的に楽しんでくれていると思うので、時代の雰囲気に合わせて番組を進化させていくことが大切で、その点をいつも意識するようにしています。

── “時代に合わせる”というスタンスは、クイズ以外のバラエティ番組作りにおいても活かされているのでしょうか?

それはすごくあると思います。構成作家の仕事をしていて、自分の中ですごく得意だなと思うのがVTRの構成の部分なんですけど、例えば、「行列ができるラーメン屋さんが下北沢にあります。行ってみましょう。それはこんなラーメンで、とても美味しいです。こんなこだわりがあります」みたいな一連のVTRがあるとします。でも単に紹介するだけじゃなくて、その情報をクイズにした方が視聴者がより楽しんでくれると思います。

この例で言うならば、「下北沢に美味しいラーメン屋さんがあります。実は下北沢ってラーメン屋さんが何十件もあって激戦区なんですが、実は今こんなに行列ができているお店があるんです。いろいろな人に聞いてみると、どうやら“煮干し”というキーワードがたくさん出てきました。“煮干し”で並ばせるラーメンって、一体どんなものなのでしょうか。それでは行ってみましょう!」みたいな流れですかね。

これ、一見クイズになっていないようで、実は興味を沸かせる仕掛けが盛り込まれているというか、Q&A形式になっているんです。「昔ながらの煮干しラーメンなのに、今どきの若者が並んでいる。そんなラーメンって一体何でしょうか? それではお考えください」という感じで。

だから、“何をクイズにしたら面白いか”という観点で、情報を取捨選択することは番組作りにすごく活きているなと思います。テレビを観ていて「何が起こるんだろう」みたいなワクワク感って、Q&Aの“Q”の部分ですよね。そこは常に意識しています。クイズではないけれど、クイズを考えているような感覚というか。そこは構成作家として大事にしている部分です。

── 将来のお話もお伺いしたいと思います。矢野さんが思う今後のテレビ業界と、クイズ番組の展望を教えていただけますか?

ここ2年くらいの話なんですけど、正直言って、もう新しいクイズ番組は生まれないなと思っていたんです。いくら考えても結局は以前からあったようなスタイルに落ち着いちゃうというか。もうずっとクイズ番組の企画を考えているから、前例のない新企画ってなかなか出てこないんですよ。

『くりぃむクイズ ミラクル9』という番組でクイズコーナーを考えているんですけど、放送開始から6年くらい経つので、すでに300個くらいの企画を考えていて、もうこれは出てこないなと(笑)クイズ番組ネタは、もう無くなったと思っていたんです。

そうしたら、『99人の壁』という番組がフジテレビのコンペで通ったんですよ。これは入社2年目のディレクターが思いついた企画なんですけど、視聴者参加型企画で、なおかつ早押しクイズというのが斬新でした。

というのも、早押しクイズって、今のテレビ業界的には扱いにくい存在なんです。クイズの性質上、“超人技”を見せるのにはいいんですけど、「早押しボタンを早めに押されて、問題を最後まで聞けない」というクレームが来るような時代になったんです。

── 早い!すごい!……でもよくわからない、みたいな。

「こっちは問題も聞けてないのに、なんで先に答えちゃうのよ」みたいな(笑)そういう時代なんでしょうかね。でもそれって、一緒に楽しみたいからなんだと思います。

例えば、クイズの早押し大会みたいに自分が参加するイベントで、周りがバンバン答えちゃったら楽しくないじゃないですか。そういうクレームが来るということは、視聴者も一緒に楽しんでくれている証拠なんですよね。そういった面では、早押しクイズが使いにくい時代にもかかわらず、あれだけの早押し要素を前面に出した『99人の壁』が、100人でゴリゴリやるっていうのが新鮮に思います。でも実際にやってみると意外と面白いんですよ。

もちろん、原点回帰的な部分もあります。でも、まだまだこれは捨てたもんじゃないなっていうのがわかる。「こういう方法があったのか!」と、望みというか、まだ可能性はあるんだなと感じましたね。

この『99人の壁』は、普段クイズ番組を観ないディレクターが思いついた企画だったんです。だから、音楽番組やスポーツ番組を考えている人にクイズ番組を企画してもらうとか、分野が違う人のアイデアで新たな可能性が広がるのかも知れないですね。

── 『99人の壁』は、特番でもやられていましたよね。

特番でたしか3回ですかね。去年の大晦日の朝10時という、テレビ的には地獄の時間でしたけれども(笑)でも社内的には面白い企画だなっていう好反応で、その後はゴールデンタイムでやらせてもらって、この秋からレギュラーになりました。

1人の挑戦者が自分の得意なジャンルで、ほかの99人と早押しで対決するという内容なので、クイズに自信のある方も結構参加されています。でも、ガトーショコラが大好きなTOSHIさんや路線図が大好きな人が100万円を獲得するような番組なので、見方が変わって面白いんですよ。

── 必ずしもクイズが得意だからといって優勝するわけではなくて、何か一つに得意な分野がある人なら、誰にでもチャンスがあるということですね。そのほかにも注目されている番組はありますか?

NHKの『チコちゃんに叱られる!』ですね。雑学の情報バラエティ番組ですけど、形式はクイズ番組ですよね。間違えたら“ブー”のかわりにチコちゃんに叱られるという(笑)

この番組もめちゃめちゃ原点回帰ですけどね。「この雑学を知ってますか?」というクイズ要素がベースですけど、チコちゃんっていう強烈なキャラクターがいて、なおかつNHKという“パッケージ”もあって、斜め目線のナレーションがツッコミを入れながら進めていくという。そういった今風な演出がすごく評判になっています。だから今年(2018年)はクイズ番組がひとつ進化した年なのかも知れないですね。

── 「こんなことやってみたい、こんな内容にしたい」という矢野さんの“理想の番組”はありますか?

“ソフト”としてのクイズはテレビ番組だけではなくて、それこそ東大王の伊沢拓司くんがYouTubeでチャンネルを作ったり、頭の体操から発展した「謎解きイベント」が流行ったりとか、スタイルが多様化していると思うんですけども、媒体としてのテレビには、僕もそんなにこだわっていないです。

実は、構成作家という仕事に就くにあたって、自分に対して一つ“宿題”を作ったんです。

『アメリカ横断ウルトラクイズ』が一度だけ復活した時に、僕は東京ドームにいて、その熱狂を肌で感じていたんです。○×クイズを通して、5万人もの人が一堂に会して盛り上がっていて、それが番組としても面白く成立しているわけじゃないですか。

だから僕は、○×じゃない形で5万人を集めて、あの時と同じような熱狂を生むクイズを作ってみたいです。それが僕の宿題。なかなか解けないから、ずーっと宿題なんですよ。 でも○×を三択に変えればいいっていうわけじゃなくて、そんな単純な話ではないんです。今は『高校生クイズ』の地区大会でスマホを活用しているけど、5万人がスマホを使うクイズっていうのもちょっと違うなぁと。それって、テレビで観る内容としてはあまり面白くないと思うんですよね。

テレビ番組としてもショーとしても成立して、なおかつクイズ自体も面白い、そんなものを作ってみたいですね。どういう形になるのかはわからないですけど、『アメリカ横断ウルトラクイズ』を超えたいという思いはあります。
>>>次回は、イベント参加者からの質問に対する矢野さんの回答をピックアップ。この場でしか聞くことができない、貴重なお話をたっぷりと伺いました。

取材協力:栗林拓司
掲載日時:2019/01/27 11:00
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